琉球エキスプレス廃止 最終航海乗船記
琉球エキスプレス廃止発表
日本最長航路(時間)である阪神航路が今年の10/7出発をもって運航終了となります。(8/31発表)
マルエーフェリーのホームページでは運休・休止とありますが、もう客扱いをすることはないでしょう。
琉球エキスプレスはマルエーフェリーの阪神航路に使われていて神戸〜大阪〜奄美〜那覇を40時間ほどで結んでいます。2017年現在、日本最長時間航路。
一つの船でやりくりしているので自然と週1往復くらいになります。毎日ではないのも乗船難易度の高さです。
この船は自販機しかなく、暇つぶしの施設もないので上級者向けのフェリーですね。
LCCが流行する中、時にはその倍以上の値段と20倍の時間をかけて沖縄に行く人はバイクを積むとか理由がない限り普通はいませんよね。
でも、何もすることがないようなゆったりとした船旅が出来るフェリーは他にはないでしょう。東京〜徳島〜北九州のオーシャン東九フェリーも渋いですが違うんです。
この船は沖縄に行くので日本を放浪するようなテンションの高い旅人も乗っていることもあります。
他の航路とは何だか雰囲気が全く違うのです。
板張りのデッキに座り込んでカップラーメンを食べる幸せ。
その3年前、クルーズフェリー飛龍21という東京と沖縄を50時間で結ぶフェリーがありました。運良くその最終便に乗れ、沖縄に到着する前に何だか沖縄をすごく楽しめた気持ちになれました。
ただ、物凄く暇ですが……
何も作業をせずひたすら海を見て……
時代の流れですね。
ラストラン、乗りに行きます。
最終便乗船記
10/6、東京をグランドリーム337号にて出発。早朝大阪に着き、適当に過ごした後、神戸の御影駅へ行く。
バスの出発時刻は12:20。駅には11:30頃に到着した。最寄りのスーパーで色々と買い込む。
というのも、この船にはレストランはなく焼きおにぎりやカップ麺、パンの自動販売機があるだけだからだ。
バス停の看板の「マルエーフェリー」も無くなってしまうのだろうか…
ターミナル
バスに乗り六甲客船ターミナルに着く。東京航路のプレハブに比べるとありえないほど立派だ。阪神航路の時しか空いてないよう。今後どうなるのだろうか。
バスの「マルエーフェリー」という幕も見納めだろう。
発券カウンターで乗船券を購入する。
友人が前回乗船した時は奥で受付したらしい。
約2000円多く出せば二等寝台に出来るが前回乗ったので今回は2等に乗船。19330円。
食事は自動販売機のものしかないと書かれている。このタイミングじゃ遅いよと思ったが、電話予約の時に注意されたのを思い出す。
チャーハンが食べられるらしいが本当はチューカハンだし、もう販売中止になっているが細かいことは気にしない。
待合所の横から。
もう神戸に来ることは無いのだろうと記念に撮影。
前回乗船した時は一階の通路を抜けてタラップから乗った記憶があるが、今回は2階のボーディングブリッジから。その為2階で待機する。
無駄に広いスペース。昔は無駄では無かったのかもしれない。左の喫茶が営業していたり、右奥の神戸市観光案内所に人が居たのだろう。今はブルーシートで覆われてしまっている。
それでも最終航海のこの日は賑やかだ。
喫茶横にはかつてのポスターが貼られている。色褪せていて見ていると面白い。
トイレは故障の為、使用中止になっている。
神戸から大阪へ
出港予定30分前の13:30から乗船開始のはずだがなかなか乗ることができない。
13:50
やっと乗船開始。ボーディングブリッジを渡り…
エスカレーターを登る。
二等船室に荷物を置き、ニチレイの自動販売機で「フライドポテト」とビールを購入。
デッキへ行き、ターミナルを見ると横断幕を掲げられていた。
Ⓐありがとう!Ⓐ
東京航路「クルーズフェリー飛龍21」の最終航海の時にはこのようなお見送りはなかったので感動してしまう。
普通なら多くのお見送り隊が居て、紙テープが舞うのだが、通常営業を貫くマルエーフェリーだとこれだけでも「凄い!」と感じる。
そこら辺の期待度は薄い。
船は神戸港を出て大阪南港へと向かう。
1時間の船旅。
ギラギラとした日差しが暑い。
しばらくすると虹が現れた。しかも、虹のある方角には忘れてしまったが「レインボー何とか」があるらしい。
なんだか幸先いいぞ!
ターンをして船は大阪南港へと入港する。
大阪南港入港
「さんふらわあさつま」
「さんふらわあこばると」
そしてフェリーターミナルにいる「フェリーふくおかII」「おれんじ8」「フェリーきたきゅうしゅうII」を見ながら琉球エキスプレスは大阪南港に入港。
左側には琉球海運の「わかなつ」もいた。前回琉球エキスプレスに乗船した時もわかなつだった。
これから18:30まで3時間半大阪で荷役作業のため先には進めない。
ただ、あくまで予定である。
船内設備
ここで船内設備を簡単に紹介。
二等雑魚寝部屋
マットが標準装備なのがありがたい。枕は四角いスポンジ。これが結構寝やすくて良かった記憶なのだが今回はダメだった。高さや硬さが合わない…
マットレスの下にこの枕を入れるとずいぶん寝やすくなった。
フリースペース
乗客同士の語らいの場。4つのテーブルと椅子、ソファがある。
電子レンジが沢山並ぶ。ただ、いくつか壊れていた。
カウンター
ソファで寝る人々
どうしてもここで寝たいのだろうか?(深夜撮影)
船尾側には喫煙室がある…があまり分煙できていない。暇を持て余す乗客のため本や雑誌置かれている。その奥にコインロッカー。
さらに進むとトイレと謎の階段。
二等和室
船首側には二等洋室や二等寝台、シャワールームなどがある。
自販機コーナー
飲み物の自動販売機の他にパンやニチレイ、カップ麺がある。脇にはお茶や水が無料で飲める給水機がある。コップは持参のこと。
名門大洋フェリー出港
琉球エキスプレスが大阪停泊中にある数少ないイベントが名門大洋フェリーの出港だ。
フェリーふくおかIIに乗っている人たちの何人がこの光景が最後だということを知っているのだろうか。
かりゆしの向こう側へと去っていく
最後の別れだ
しばらく経つと日が暮れて大阪港もライトアップされてくる。
出港
出港予定時刻は18:30。
その30分ほど前からデッキに出る人が多くなり皆で荷役作業を見ていた。
扉ギリギリのサイズのコンテナを倉庫から出し、船に詰め込んでいくプロの技に見惚れていた。
しかし、とっくに出港時刻の18:30は過ぎ、19時も過ぎ……
別に先を急ぐわけではないけれど足が疲れたから早く出港してほしいと願う人々
19:30
ようやく作業は終わり、出港準備が整った。
出港して汽笛が三回。
そして「かりゆし」からも汽笛が三回。
ライバル会社の貨物船が汽笛を鳴らしてくれた!
ライバルでもあり仲間でもあったのかなぁ
こちらも嬉しくなって手を振ってみる
さらば大阪港
夜の月は美しかった。
1日目の夜
1日目の夜はなんだかんだと一緒になった友人達と、時には他の乗船客と語り合い寝るのが1時くらいになってしまった。
夕飯は乗船する前にスーパー買い込んだ物をパクパクと。サトウのごはんに味噌汁、もろきゅうにブドウ、腹が減ったらニチレイもあるしレストランがない事がまったりしていてよかった。
私にとってのマルエーフェリー
そういえば、二等の隣の客が個性の強い人だった。沖縄のハイテンションさと関西の図々しさを足して割った…じゃなくて掛けたようなおばあさんだった。とりあえず関西おばぁと呼ぼう。
私は友人と二等の端っこの席を取っていたのにもかかわらず途中の大阪で乗船した関西おばあは「奥まで行くと大変だからここで良いよね」と席を取られてしまった。その後くちゃくちゃと入れ歯で遊ぶ。気持ち悪い。
聞くと、琉球エキスプレス最終航海がこの日であることを1年前から知っていたと言う。いや、そんな訳ないだろと。
私が買い出しして来たスーパーの袋を見て「いっぱい買ったねぇ」と言って来た。これか伏線となる事はこの時は分からなかった。
暫くした後、関西おばぁは「沢山あるでしょ、なんかあればお金出すから売って」と言われた。適当にあしらうもしつこいおばぁ。
「イチジクと何とかはあったんだけど全部食べちゃって…こんなに人が多くて、自販機もなんにもないからなぁ」とうるさい。
しつこさに耐えかねて売ることにしたのだがサトウのごはんを103円で売れと言ってきた。いや、消費税3%じゃないし、原価割れしてるし。
150円でと言うと自販機でお金を崩してくると大きな声で言って来た。その数時間後、大きな声で「お金崩したから〜」と。
サトウのごはんを渡すと「ラーメン売って?ダメ?まぁ、そこでカップ麺売ってるから大丈夫。生き返った。ありがとう」とまたうるさい笑
他の乗船客にも目線を送りつけ食べ物をもらっていたようだ。
良くも悪くも琉球エキスプレス。良くも悪くもマルエーフェリー本州便。
前回、琉球エキスプレスになった時も2日目の早朝4時くらいから騒いでいる3人組が居て沖縄のハイテンションピーポーだった。一人は名前が「だばしゅー」とか言うおじさん。もう一人はおばさんで、もう一人は30才くらいのお兄さん。沖縄でリゾバか何かをしに行くのだという。
気がつけばその輪の中に入ってしまって一緒に船旅を楽しんだ。今、どうしてるのかなとは思わない笑
クルーズフェリー飛龍21の最終便でもギター弾きで世界を放浪するライダーさんと金髪ハイテンションの女ライダーが居た。なんか怖いし、絶対この人達とは絡まないし、世界も違うと思って居たら1日目の夜には一緒に酒を飲んで「宇宙戦艦ヤマト」などを歌ってもらっていた。
旅人のプロだなと思った。
我々もそうなのだろう。最終便だからと最初に私が乗った船が飛龍21。船が見えると走り出す船好き。マニアックなところを求める島好き。そして沖縄のハイテンションピーポーに、見た目怖いライダーさん、関西おばぁと変な人ばかりが乗る船、それが私のマルエーフェリーの本州航路というイメージだ。
この写真は飛龍21のデッキ。
私にとってのマルエーフェリーはやはり板張りデッキ。そして、これこそが船のデッキと言いたい。よく晴れた日、ここに座り込み、そして寝転んで酒すら飲まずボケ〜っとするのが最高の幸せだと感じる。
普通のデッキだととても座り込む気になれないが板張りだと座りたくなる。どっちも同じように汚い事は知っているがそれでも座りたくなる。
何故だか知らないが味があるこの板張りデッキ。板張りデッキの夜行フェリーを探し求めて色々なフェリーに乗ってみたが日本にはここしかない。
もうそろそろ海外に行くべきなのだろうか…私の飛龍21を求めて…
2日目朝
個人的な想いがあり過ぎて長くなってしまった。
さて話を戻そう。
2日目の朝である。
前日も寝たのが1時あたりで遅かったのでゆっくり寝ていた。ふと外を見ると明るいではないか。慌ててカメラを持ってデッキに出てみた。
水平線に雲はあるもののスカッと晴れててピシャッと朝の空気が気持ちいい。船はしっかりと進んでいる。
水平線に雲があるお陰なのか、事実上の日の出を拝むことができた。
友人は朝ビールを飲む。
ニチレイ自販機故障!?
朝ごはんはバナナやニチレイ。適当な食事がまた良い。ニチレイの自動販売機に500円玉を入れ焼きおにぎりをボタンをポチッ。「調理中です」と自販機はいい、少し遅いタイミングでお釣りが出てくる……筈だった。
しかし、出てこない。残り60秒で食べられるという時にチャランと500円玉が落ちて来て全てが「売切」表示になってしまった。なんてことだ!?
500円玉をあたためたのか?でも暖かくはなってなかった。あの期待させる待機時間は何だったのだろうか。
まぁただでさえ平均400円と高いニチレイの自販機が2台とも売り切れ表示というのはなかなかレアで面白かったがショックなものはショック。お金はちゃんと戻って来たので諦めた。
前回乗船した時も500円玉を入れて370円の焼きおにぎりを買ったらお釣りが230円出てきた。100円引きだ。
やはりこの船の自販機だからか何か不思議なパワーが働いているのかもしれない。焼きおにぎりを500円玉で購入してはいけない笑。
デッキで…
外は気持ち良い快晴で板張りデッキで昼寝したくなる。オリオンビールは売り切れなのでサザンスターを購入。本当は350mLが良かったが売切れで500mLしかなかった。
デッキに友人の銀マットを敷き、横になる。たまにビールを飲む。
そしてまた横になる。海が綺麗だ。
そのうちビールを飲むことさえ忘れて夢の中…
幸せなり。
ビールを半分以上残して眠ってしまった。ぬるくなったビールをダラダラ飲むのもそれまた乙なものだろう。
船旅って必ずしも豪華が良いわけじゃない。晴れた日に板張りデッキで昼寝する事が個人的には最高だ。
そう、こんなイメージ……
街でこれをやったら完全にホームレスだ。ヤバすぎる人だ。
でもレストランすらない船ではこれが様になってる。
よっぽど疲れていたのだろう。疲れていると目を開けて寝る癖があるが、この時もそうだったらしい。多くの人に「目を開けて寝てたよ」と言われた。目が乾かないかと聞かれるが、そもそも起きている時分に目が乾いたとあまり感じないので寝ている時も同様である。
若干ホラーであった事はここでお詫びする。
この船では飛龍21最終航海に乗っていた人も何人か乗船していた。私の知る限りで知り合いが3人、ツイッターでのみ知っている人が1人。今回はそのツイッターの方とも出会えて良かった。もう会える事は無いだろう。
再びニチレイ
さて、再びニチレイの自販機の前へ行くと丁度乗組員が通りかかったので事情を説明した。
自販機を開けてガチャガチャ…
商品受けにさっき購入しようとした「焼きおにぎり」が凍ったまま出てきた。この自販機壊れたのか?どうしても自販機がうまく働かないので凍ったまま購入した。
右が解凍前、左が解凍後。こういうネタをいかに楽しめるかが何も無いフェリーの過ごし方である。
自動販売機内部の温度がどんどん上昇しているとのことで発売中止に。中の商品ダメになるから無料で配ってくれれば良いのにと心の中で思う。
貴重な共食設備が失われた為、臨時で対応がなされた…が詳細については察して頂こう。案内所には一瞬だけ行列が出来た。
飛龍21の時の食券争奪戦を思い出す光景だ。
柿ピー、そして夕日
再び少し昼寝をしていると船内放送が。今、種子島沖を通過しているらしい。この船の唯一の観光案内だ。何故かここだけ案内をする。
形が柿ピーに似ている種子島と屋久島。最初は柿のほうが見える。
デッキに出てみよう。種子島はあまりに縦に長くて写真に収まらない。
反対側にはまだ屋久島は見えない。小さい島が見えた。黒毛島だ。
1,2時間すると見えてきた。
こんどはピーナッツ、屋久島。この日は雲がかかっている。 何も無いところにいきなり1936mの宮之浦岳がそびえ立つのだから必然的にほぼ毎日雲がかかる地形になっている。
ここから先は十島村のトカラ列島がちょこちょこ見える。中之島や諏訪之瀬島。
地形図とGPSで確認したいが中々動作しない。
そろそろ夕日の時間。
雲の間から光が差し込み、今日1日の出来事を振り返る。本当に何にもしていなかったなぁと。
撮影大会
うまく写真を撮るのは中々難しいがそれでもカメラを構えてしまうのが人間の心理なのか。
生でじっくり見たい気持ちと写真に残したい気持ちが交差する。
日が完全に沈み、後は食事をしながら夜のメインイベントを待つのみ。奄美大島、徳之島、沖永良部島と深夜時間帯に寄港する。全部見られるかわからないが出来るだけ頑張ってみよう。
夜のデッキ
月が出るまでの間、星が綺麗だった。船の上では明かりがなくて星が見やすいような気がするのだが意外にも光が多く、星が見えにくい。
ファンネルの後ろ側など光が届かないところで空を見上げてみると満天の星空。目が悪くても天の川が余裕で見える。
この日は流星群があると聞いてしばらく見ていたのだが見つけられなかった。前日の夜、流れ星を見たと友人が言っていたので注目していたがやはり厳しかった。
流れ星、見たことがないので羨ましい。
最後の夜の寄港ラッシュ
奄美大島名瀬新港
間も無く奄美大島の名瀬港に入港する。進行方向右手にはトカラ列島を週2-3便で結ぶフェリーとしま。11月には新造船の進水式が行われ、2018年3月には引き渡し予定となっている。今が乗れる最後のチャンスだ。
就航率は90%とすこし低め。台風や荒波の8月,9月,10月,12月,2月の乗船は避けた方が良いかもしれない。
進行方向左手にはマルエーフェリー「あけぼの」が丁度出港したところだ。鹿児島と那覇を結ぶ姉妹船。さらば、友よ。
そろそろ奄美大島、名瀬新港に入港する。
入港する頃になるとデッキの車両後半行きの扉が開放される。本州から車で来る人もそこそこ居たのだろう。今回は徒歩客の方が多いように見える。
乗船するお客さんは4人。下船もそれくらいだった。ツイッターのフォロワーさんも1人降りていった。荷役作業が行われる。
22:05
船は静かに出港する。最後だから汽笛を鳴らして欲しいという気持ちの人もいたが期待は裏切られた。迷惑かもしれないけれど最後なんだから良いじゃないかと。
そこはマルエーフェリー。通常営業の方針を変えない。今日違うのはお客さんだ。そしてお見送りに来ていた人も数人。手を振り、振り返した。
フリースペースに戻ると予定がすこし変更されていた。
徳之島は亀徳から平土野に沖永良部島は和泊から伊延に変更。時間は大きくは変わらないもののこの時間に港が変更されると大変だ。
大峰山丸と反航
22:52
右舷に小さな光が見えた。
貨物船の大峰山丸だ。友人が大峰山丸の船長と知り合いのようでカメラのAF補助光でUWのモールス信号を送る。UWは「ご安航を祈る」という意味。暫くして「確認できました」とメッセージが届いた。
うむ……感動。
旅の疲れが出てしまったので次の寄港地に着くまで軽く睡眠をとる。
徳之島平土野港
1:15徳之島平土野港に到着
ここでもまた数人降ろして数人乗ってきた。
深夜帯なのかお見送りの人はほとんどいなかった。静かに出港する。
沖永良部島伊延港
3:10
深夜帯にもかかわらず横断幕が掲げられてお見送り隊もいた。
長い間、お疲れ様でした。ありがとうございました‼︎
船の乗組員はアレだけど、でも地元の方の愛に溢れている船だ。ひっそりと愛されていたんだ。
ここら辺の島では琉球エキスプレスを使えば夜に船に乗れば朝沖縄に着く。そして用事を済ませてその日の夜船に乗れば帰って来られる。たまにしか来ないけどとっても便利な船だったのだ。
出港すると手を振ってくれた。
名残惜しく最後の夜を板張りデッキで過ごす。
最後の朝
少し遠くに大阪で一度別れたわかなつがいた。
右手にはマリックスラインのクイーンコーラル8が出港したところだ。
板張りデッキで…板張り甲板で過ごす最後の時。ここに座って…時には横になって海を眺める贅沢さはもうやって来ないのか。
そう思うと涙が出てきた。
つまらない船だよ、マルエーフェリー。でもそれ以上の何かを持っているよ、マルエーフェリー。
沖縄県那覇新港
8:40
新造船の琉球エキスプレス5がお出迎えだ。
琉球エキスプレス5には多くのお出迎え隊が手を振ってくれている。「先輩ありがとう、これからは私が頑張る」とでも言っているのだろうか。
この船、本当に通常営業で最後のアナウンスに「最終」などというワードは全くなかった。
それどころか「早く降りてくださーい」
まぁ、仕方がない。マルエーらしい。
我々は降りることにした。
それでも僕は言う
琉球エキスプレス ありがとう!