中国鉄道 デビューしたばかり寝台新幹線D311次の旅
中国の寝台新幹線に乗ってきましたので車内の様子などをご紹介!
寝台新幹線とは
正しくは新幹線ではなく高速鉄道(高铁)といいます。在来線の線路も走ります。つまり、車両が新幹線タイプの寝台列車です。中国には車両のみ新幹線(高速鉄道)の物が多く走っています。
車両はCRH2E型を参考に作った最新型寝台新幹線。運用開始が2017年7月4日という事でデビューからまだ3ヶ月程しか経っていない列車です。CRH2EはJR東日本がE2系の技術を提供し作られた車両です。
座席(寝台)は「軟臥(软卧)」と「寝台(动卧)」のみで全車寝台車です。「軟臥」とは「柔らかいベッド」の意味で日本でいうA寝台車に相当します。
公式によると乗車定員は800人、16両編成。サンライズの定員が14両で300人なのでかなり多いですね。一両の定員60人。「軟臥」の車両は一両で定員が20人、半分がカフェカーとなっています。他はすべて「寝台」となっています。ただ、全ての車両に「軟臥」と書かれて居るので「寝台」も「軟臥」の一部と捉えて良いでしょう。今回はその「寝台」に乗ってきました。
(定員の計算が合いません…お分かりの方、コメント下さい)
公式の記事がこちら
http://j.people.com.cn/n3/2017/0704/c95961-9236869.html
外観は二段式になっています。見た目はE2系というよりE4系か?中国人にとってはカシオペアのような列車なのかもしれません。
D311次基本情報
今回乗ったD311次は北京南駅から上海駅を約12時間で結びます。車両はCRH2E-2463。北京南21:16発、上海9:08着。距離が約1300kmで運賃が「寝台(动卧)」が630元(約1.1万円)、「軟臥」が730元(1.3万円)です。あまり運賃に違いは無いですね。
因みに「次」は「号」と同じ意味です。
乗車
中国では身分証明書を提示してきっぷを購入、簡単な荷物検査をして待合室で改札が始まるのを待ちます。待合室が空港のように広いです。
ホームの入り口が検札場所になっています。時間が近づくと行列が出来てきます。
検札が始まると人民大移動、一斉にプラットフォームに降りていきます。なので早く駅に着いたからといってホームに降りることは出来ません。基本的に列車の撮影は禁止されているので撮影する際は気をつけましょう。
乗った時の動画です。
列車速度
車内にはディスプレイに現在の速度が表されます。車両的には200km/h以上出せそうだし、出して欲しかったのですが160km/hくらいが最高でした。30km/hくらいでノロノロ走る時もありました。まぁ、それはそれで新鮮で良いのですが笑
北京ー上海が約1300kmで昼の新幹線は4時間程で走破しますが寝台新幹線は約12時間かけて走ります。平均時速は約110km/h。冷静に考えるとバカ停でもしない限り200km/hは出さないだろうなと分かりますが、高速を期待していたので残念でした。中国の客車列車も160km/hは出せるので「なぜ高速鉄道車両で?」といった感じです。所要時間も8時間くらいにしたら良いのでは無いかと思います。8時間なら平均時速160km/hですね。
最近、「客車列車で主力の直達特快列車(Z列車)に使われるT25型客車が廃車になり、動車組(高速鉄道)に置き換えていく」という報道がありました。もしかしたらその置き換えの試験的な運用なのかも知れません。
車内の様子
寝台
それぞれの寝台にカーテン、テーブル、荷物置き場、コンセント、USBが標準装備で付いています。コンセントは日本と同じタイプです。200Vなのでスマホやカメラ、バッテリー、wifiの充電なら問題なく出来ます。
上段、ベッドが通路側席
私が使用した寝台はこちら!2階のベッドが通路側のタイプです。寝台はレール方向にズラッと並んでいます。個室感を高めた開放A寝台という印象です。
通路側に布団があり、窓側に荷物置き場とテーブルがあります。頭の側にマットがあるので座る時も割と楽です。コンセントもこちら側なので、寝ながら充電しながらスマホをいじる事も簡単です。
一方、足の方は若干狭くなっています。幅が40cmくらいか。なんとなく寝袋で寝るような感じです。それ以外は80cmくらいだったか、狭いとは感じませんでした。この足の狭い部分が実は一つお隣のテーブルとなっています。私の寝台は車端だったので違いますがテーブルの下には誰かの足がある事になります。とはいえ壁で仕切られて居るので気にならないでしょう。場所の有効活用といった印象を受けます。
荷物置き場とテーブルは大体同じくらいの大きさで3〜40cmくらいの幅。大きなキャリーバッグを置くには狭いでしょう。
実際に使ってみて荷物置き場が窓側にあるため、若干外が見づらくハズレかなと思いましたが、荷物が体の奥側にあるため盗難リスクが少なく、そういう意味では安心して寝られると感じました。
難点はカーテンの遮光性。夜になると一部消灯しますが、通路の半分の電気は付いています。カーテンの遮光性が悪い為その光が容赦なく降り注いできます。特に2階でベッドが通路側だったので光源に近く明る過ぎるのでアイマスクをしてしまいました。外にはちゃんとしたブラインドがあるのに残念ポイントです。
それでも居住性はなかなか良かったです。線路が標準軌だから車内も広いのが良いです。サンライズのシングル個室よりも広い印象です。
他の寝台の様子もご紹介。
上段、ベッドが窓側席
テーブルが通路側の寝台はテーブルがカーテンの外にあるので盗難が怖いです。結局ベッドに食べ物を置いて飲み食いをしてしまいそうです。
下段、ベッドが通路側席
暗いですが雰囲気は分かるかなぁと。フラッシュの存在をすっかり忘れていました。
この一つ右側の席が次に紹介する席です。テーブルの下に足が来るという意味がわかると思います。
下段、ベッドが窓側席
こちらもテーブルがカーテンの外側にありますね。荷物をどこに置こうか迷いそうです。
席番号表
寝台と寝台の境の柱には席番号が分かりやすく表示されています。
軟臥
カフェカーと一緒の車両になっています。
他人が寝ているのでしっかりは調査できていませんが、イメージとしてはトワイライトエクスプレスのBコンパートメントをもっと個室化した感じです。客車列車の軟臥と同じ作りです。寝台毎にカーテンがあるかチェックは忘れました。客車列車だとカーテンは無いのですがどうなのでしょう。「寝台」であるのですから軟臥でもあるはずですね。
リネン
ベッドは丁度良い柔らかさで毛布もなかなかしっかりしていて気持ちよく寝られます。お馴染み開放B寝台のリネンよりも上質な印象。枕も大きく快適です。個人的にはもう少し枕が高いと良かったかもしれません。外国でずっと気を張っていて疲れていたのでずっと横になっていました。
標準装備で使い捨てスリッパが付いてきます。それぞれ色が違い他の人のスリッパを履かないような工夫がなされてます。
寝間着はありませんでした。ここに関しては日本に劣っています。でも、もしパジャマを標準装備にしたらその格好でウロウロする人が多くなるかも知れません。
客層
中国ではマナーモードという概念は無いようで客車列車だと普通にスピーカーで動画を見たり、夜でも電話をしたり、そこそこうるさいのですが寝台新幹線ではかなり静かでした。響き渡るのは走る音と車内放送くらい。高速鉄道というだけあってビジネス客も多いのでしょう。静かに自分のベッドで本を読んだりパソコンをしたりという人か多かった印象です。
良い意味で全然中国らしく無いと感じました。
静かなのは良いですがデメリットを挙げるとすると、旅ならではの人と人とのの交流は期待出来ないことです。
乗車率
深夜徘徊をして見ると実際の乗車率が見えてきます。在来線の北京ー上海はそここそ埋まっている印象なのですが、この列車は2〜3割程でした。
在来線なら最安値3000円、硬臥で5000円、軟臥で8000円。新幹線なら最速4.5時間で9500円です。12時間かけて11000円とる新幹線ですのでまだ物価の低い中国では高嶺の花かも知れません。でも日本とは反対でまだまだ夜行列車が活躍しそうな中国ですから今後に期待ですね。
出発
発車してすぐに聞き覚えのあるチャイムが鳴り車内放送が始まります。「南京、蘇州、上海に止まります」くらいしか聞き取れませんでした。
その後、検札が始まります。ピシャとした女性がきっぷと身分証明書をチェックしていきます。これが終われば後は寝るだけです。
洗面所
洗面所も非常に綺麗でした。
洗面所の隣にはカップ麺やお茶を入れるための給湯器があります。中国人には必須装備です。
トイレ
トイレはかなり驚きました。洋式です。ティッシュペーパーがあります!そしてティッシュペーパーがトイレに流せます!
トイレ事情は基本的に日本が一番良いのですが、中国の新幹線のやる気を感じたところです。便座を拭くための紙まであります。
メンテナンスもかなり頻繁にやっているようでびっくりしました。
カフェカー
軟臥と一緒になっているカフェカー、というより売店です。営業時間帯は遠慮して撮影はしませんでした。お菓子など売ってましたがあまりピンとこなかったので購入には至りませんでした。
メニュー表をあげておきます。
まとめ
寝台新幹線は速度だけを見ると客車列車と変わらない印象ですが、車内はかなり綺麗で静かで近未来感がありました。速度を期待するならば北京ー昆明など更に長距離を走る新幹線に挑戦してみるのもいいかも知れません。
ただ、人と人と触れ合いがありどこか懐かしさの感じられる客車列車の良い雰囲気は消えてしまいました。
ある意味、日本人的好みな列車とも言えると思います。